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フランスの先生から、せん定を学びました!(第一回 flux de sève)

3月19~21日に、フランスのロワール地方の機関であるSICAVACから、Mme  Emeline  PITON(エメリン ピトン先生) をお招きし講習会を行いました。県内3会場では実際にせん定をしていただき計170名が、室内での講演会には140名が参加し、基礎理論と実践を学びました。

「目からうろこが落ちるとはこのことだった」という声を何人からも聞きましたが、企画した私(管理人)自身もその通りです!いずれこのホームページでも会員の皆様に解説など紹介していきたいと思います(SICAVACと交渉し、どこまで紹介可能か確認する作業がありますので、しばらくお待ち下さい)

備忘録を兼ねて、管理人が感じた重要点を、講習資料中のキーワードと、せん定の格言(管理人が勝手に作ったものもあります)と共に、何回か紹介していきます。

(今回の和訳にあたっては、配布資料で紹介いたしました通訳を引き受けていただいた皆様のアドバイスを統合していることを申し添えます。)

 

(No1)  flux de sève : 「成木の形を真似て、幼木のせん定をしてはならない」

flux de sèveは今回「樹液の流れ」、「樹液流動」などと訳しましたが、講習会を通じて最もPITON先生が強調したキーワードだと思います。何年も栽培していて、樹勢低下、樹の痛みなどで悩んでいた方はすぐに納得できた一方で、栽培歴が浅いとかまだ植えていない人はピンとこなかったかもしれません。

発想の基本は次です。

1 樹にとって、せん定は不可欠だが、樹に傷をつけてしまうのも事実。

2 ならば樹へのダメージが少ないせん定とは何かを考え実態調査を行った。

3 その結果、樹液の流れに行きつき、理論的に体系化した。

恥ずかしながら管理人も、枝の選択と切り方は、なんとなく決めていました。早速今日、仕事の仲間と樹液の流れを意識してせん定をしてみましたが、難しいです!樹齢を経ているほどむずかしくなりますね。逆に、3年目位までに意識して流れを作れば、以降はパターン化される部分も増えるのかなとも思いました。

果樹では、「成木の形を真似て、幼木のせん定をしてはならない」という原則があります。年齢に応じてふさわしいせん定の方法、いわば「設計図」があり、それに従いながら成木に誘導していくという原則で、全ての果樹で設計図が示されています。品目によってはまさに樹液の流れを考え、芽や枝の位置と切り方を決めており、私見ですが日本各地で栽培され歴史が長い品目(梨、桃、生食用ぶどうの平棚)に多いように思います。

今回管理人は初めて、垣根仕立てで「樹液の流れに基づく設計図」を教わりました。今までイメージしていた設計図が単に成木を真似ていただけだったこと、垣根仕立ての歴史がフランスに比べ短いこと、の双方を思い知りました。

 

コラム

外から見た形と樹液流動の話を書いているうちに、種子島に鉄砲が伝来した時の伝説を思い出しました、、、鉄砲の威力を知った種子島の領主は、大金を払い鉄砲をポルトガル人から買って、島の鍛治屋さんに命じて鉄砲を作らせました。鍛治屋さんは鉄砲を分解したとき、初めてネジというもので鉄筒の後部がふさがれていることを知りました。鍛治屋さんは苦労の末、「形を真似て」ネジを作りましたが、撃つとすぐ壊れてしまいました(諸説あって、ネジを理解できず鉄筒の後部を溶接してふさいだとの話もあるそうです)。困った鍛治屋さんを見た娘さんが、「私がポルトガル人に嫁いで、秘密を聞き出します」と申し出ました。そうして得たのは、当時日本には無かったネジをつくる技術をもって筒の後部をふさぐ方法でした。新しい概念と技術を知った日本人は、改良を重ね、数十年後にはヨーロッパをしのぐ鉄砲保有数になりました。、、、管理人にとって樹液流動は、ネジという仕組みを知った段階なのかもしれません。

しかし、この話には続きがあります。その後鎖国に入った日本は、鉄砲の形やサイズの改良は進化したものの、基本構造は火縄銃から変わりませんでした。種子島から300年余後の幕末に黒船が来て再び欧米の鉄砲を見た日本人は、その基本構造の進化に驚いたそうです。以降急激に鉄砲は欧米の方式に変わっていきました。、、、PITON先生の教えはこの段階なのかもしれません。

鉄砲という物騒なものに例えるのは良くないですね、スミマセン。管理人が言いたいことは、「革新的技術とは、知ってしまえば単純だったり当たり前だが、だからこそ気づきにくい場合がある」こと、「新たな革新的技術を導入することが打開策になり得る」こと、そして「得られた革新的技術の改良に終始することなく、次の革新を模索することが大切」ということです。ともあれ、PITON先生、ありがとうございました!