気象観測情報

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ウインクラー・インデックス(4月1日~10月31日) ヘリオサーマル・インデックス(4月1日~9月30日) クールナイト・インデックス(9月1日~9月30日) グローイング・シーズン・テンペラチャー(4月1日~10月31日) バイオロジカリー・エフェクティブ・デグリー・デイズ(4月1日~10月31日)

積算計算プログラムで使用される言葉についてご説明します。

活用方法

(1)積算温度、ウインクラー・インデックス、ヘリオサーマル・インデックス、クールナイト・インデックス

これらは一定期間の気温を、それぞれの法則に従って計算した数値である。
単年度で評価するのでなく、数年分を比較することが必要である。
また、数値のみでなく、それぞれの年の生育・果実品質・病害虫などの特徴とともに考察することで、栽培の反省に活用する。事例を積み重ねることで、将来的には気象経過に応じた対策をいち早く取ることへの活用が期待される。

活用例1 本年と昨年を比較し評価(ここでは2018年と2019年を例とした) ・ウインクラー・インデックスは2019年の方が低い
→ 2019年は生育期間を通じて気温が低めに推移し、生育を特徴付けた ・6月1日~7月31日の積算温度は、2019年の方が低い
→ 開花前からベレゾーン前の気温が低めに推移し、生育に影響を与えた ・クールナイト・インデックスは2019年の方が高い
→ 9月の最低気温は高めに推移し、成熟に影響を与えた

(2)気温、降水量の推移

基本設定では、プログラムを開いた日から2週間前の推移が表示される。
日付を設定することで、最長1年間の推移を知ることができる。
これらの推移を把握することで、今後の栽培管理に活用する。

活用例3 今後の防除タイミングを検討 ・近隣アメダス観測点の降水量が多い場合は、次回防除を早めることを検討

活用例4 生育や果実成熟を推測 ・近隣アメダス観測点の気温推移と自園の生育を見て、今後の状況を推測

活用例5 防寒対策について検討 ・近隣アメダス観測点の最低気温推移を見て、追加の防寒対策を検討

有効積算温度

有効積算温度とは、一定期間について、毎日の(日平均気温-10)の値を足しあげた値。
これは、10℃以下ではぶどう樹は生育しないとみなして、生育に関与した温度を足しあげていくという仮説に基づく。
単純に日平均気温を足しあげた数値(単純積算温度)も使用されるが、その場合の課題として、例えば一時的な異常気象があった場合もそのまま反映してしまい、比較が難しくなる。この点、有効積算温度で計算すると、異常気象や年次変動があっても比較や評価が行いやすいとされており、指標として用いられている。
なお、日平均気温でなく、日最高気温と日最低気温の平均値を用いる方法も広く採用されており、本サイトでは、「〔(日最高気温+日最低気温)÷2〕-10」と計算が単純な「日平均気温」を選択できるようにしている。

Winkler Index(WⅠ)/ウインクラー・インデックス

世界で初めて、ぶどう栽培地や適品種を、気象と関連付けて区分した指標で、1944年にAmerineとWinklerが発表した。ウインクラー・スケールあるいはウインクラー・リージョンとも呼ばれるが、ここでは欧米の論文で多用されているウインクラー・インデックス、略記号WⅠを用いる。
ぶどうが生育する期間の、毎日の気温の合計をもとに、ぶどうの成熟度を推測する手法である。この指標の背景にある仮説は、温度が高いほどぶどうの成熟度も高い、というものである。
集計期間は、北半球は4月1日~10月31日で、ぶどうが発芽し収穫されるまでの期間が含まれている。
計算にあたり、ぶどう樹は10℃を下回ると生育しないとの生物学的観察をもとに、日平均気温から10を引いた数値を合計する。その値がゼロを下回る場合はゼロとする。その後改良され、日平均気温でなく、〔(日最高気温+日最低気温)÷2〕-10 を合計していく方法が主流となっており、本サイトでもこの計算方法を用いている。
原典では産地とワインのタイプを主に考察していたが、その後世界各地で研究され、積算温度による品種と産地を区分する指標が各国で作成されている。ここでは、日本ソムリエ協会と、イタリアの文献を参考とした指標を紹介する。
古い指標であるが、計算が容易でわかりやすいことから、現在でも一定の参考にされている。しかし、長野県内ではこの区分があてはまりにくいとの評価がワイン用ぶどう栽培現場、ワイン製造現場では言われている。その理由は、欧米に比べて長野県内の気候は、夏暑く冬寒いこと、このため発芽は欧米よりも2週間程度遅いが収穫期はさほど変わらない、つまり生育期間が欧米よりも2週間程度短いためと推測される。

Heliothermal Index , Huglin Index(HI)/ヘリオサーマル・インデックス、ユグラン・インデックス

ウインクラー・インデックスを改良した指標で、Huglinが1978年に発表した。ヘリオサーマル・インデックスまたはユグラン・インデックスと言われることもあり、いずれもHIと略記される。
ウインクラー・インデックスの計算では、平均気温が10℃未満の日はゼロとなってしまい、日中に10℃を超える気温が生育に与える影響を考慮していない。これに対し、ヘリオサーマル・インデックスでは日最高気温の関与を付加した。
集計期間は、北半球は4月1日~9月30日で、ぶどうの発芽から成熟期までの期間が含まれている。
計算には、毎日の〔(日最高気温-10)+(日平均気温-10)〕÷2 を全て加えた数値を求める。その数値がゼロを下回る時はゼロとする。また、緯度による日長を考慮するための係数Kも計算に加えており、長野県は1.0である。
この指標は地球温暖化が世界の共通認識となる直前に提唱されたこともあり、指標の背景にある仮説は、「ぶどうの成熟には高温が望まれる」という時代や産地を代弁していたとの指摘がある。 ぶどうが成熟できるかを推しはかる指標として、発表以降2000年代までに世界的にこの指標による区分の研究が行われ、あてはまりやすいとされてきた。しかし日本ではウインクラー・インデックスと同様に、ぶどう生産現場でもワイン醸造現場でも、あてはまりにくいとの評価がある。

Coolnight Index(CI)/クールナイト・インデックス

多くのワイン用ぶどう品種が成熟する9月(北半球)の日最低気温に着目した指標で、各国の複数の研究者が発表してきた。2004年にToniettoとCarbonneauにより、世界各地のワイン用ぶどう産地・品種において気象のどの要素が大きく関与するか解析した論文が発表され、大きな影響を与える指標として紹介された。
この指標は、成熟に伴う二次代謝産物のうち、ワイン品質を左右するポリフェノール、芳香成分、色素成分などの蓄積がどうなるか、また酸度がどの状態になるかを推しはかるための参考に活用されている。それら成分の量に最も影響する気象要素は、昼の高温でなく夜間の低温である、との仮説に基づいている。
集計期間(北半球)は9月1日~9月30日で、毎日の最低気温を平均した値を指標とする。
世界各地でこの指標の有効性が確認されている。日本においても主要品種は9月に成熟していくため有効な指標となる反面、前述2つのインデックスと同様にあてはまりにくいとの指摘がある。また、8月末~9月上中旬に収穫となる品種に対してこの指標をどう参考にしていくのかは今後検討が必要である。

Growing Season Temperature(GST)/グローイング・シーズン・テンペラチャー

2006年にJonesによってブドウの栽培地の緯度の上限と下限を示すものとして考案された。ぶどうの成熟度の指標とされる。計算は「4月1日から10月31日までの(最高気温+最低気温)÷2の平均値」と比較的単純なので取り組みやすい。
本サイトでは、計算値の区分分けについては、Jones, G.V., Duff, A.A., and A. Hall (2009)に従って「Too Cool」から「Too Hot」まで7段階で行った。
また、Jones(2006)に従って品種別の成熟範囲をできる限り正確に示しているが、範囲の両端は必ずしも正確ではない可能性がある。

Biologically Effective Degree Days (BEDD)/バイオロジカリー・エフェクティブ・デグリー・デイズ

winkler Indexと同様にぶどうが生育する期間の、毎日の気温の合計をもとに、ぶどうの成熟度を推測する手法であるが、ある一定以上の温度では植物の発育速度がそれ以上にはならず停滞するという考え方に基づき、Gladstonesが1992年に考案した。当初は計算値を元に8つのグループに分類していたが2011年に9グループに変更された。

4月1日から10月31日までについて、次の式で計算。
min[max(平均気温- 10, 0)K + DTR adj, 9]

式の意味は「平均気温-10」と「0」の内大きい方の値に緯度補正(K)を掛けて、さらに日較差補正値(DTRadj)を加えた値と9のうち小さい方の値をとる。

気温日較差による補正は、
気温日較差が13℃より大きい場合、「0.25×(日較差-13)」、
気温日較差が10℃以上13℃未満の場合、「0」、
気温日較差が10℃未満の場合、「0.25×(日較差-10)」

緯度補正は、次表の通りで、本サイトにおける長野県内の気象観測地点はいずれも北緯35~40度の範囲内であるため、各月において35度と40度の補正値を結ぶ回帰式を作成し各測定地点の緯度を代入して補正している。

表:緯度別月別の補正値

緯度 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
25 0.962 0.928 0.912 0.920 0.946 0.987 1.038
30 0.972 0.951 0.938 0.942 0.961 0.991 1.027
35 0.986 0.974 0.967 0.969 0.979 0.995 1.014
40 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000
42 1.007 1.013 1.015 1.014 1.009 1.002 0.995
44 1.014 1.026 1.031 1.028 1.019 1.005 0.989
46 1.022 1.040 1.049 1.045 1.029 1.008 0.982
48 1.030 1.055 1.069 1.062 1.041 1.011 0.974
50 1.039 1.072 1.090 1.082 1.053 1.014 0.966
52 1.049 1.090 1.113 1.103 1.066 1.018 0.957

参考文献

  • Amerine, M.A. and Winkler, A.J. (1944). Composition and quality of musts and wines of California grapes. Hilgardia. 15 (6): 493–675.
  • Gladstones, J. (2011). Wine, Terroir and Climate Change. Kent Town, South Australia: Wakefield Press.
  • Jones, G.V. (2006) Climate and terroir: impacts of climate variability and change on wine. Macqueen, R.W. and Meinert, L.D., eds. Geoscience Canada (Geological Association of Canada: St. John’s, NL, Canada) pp. 1–14.
  • Jones, G.V., Duff, A.A., and A. Hall (2009). Updated analysis of climate-viticulture structure and suitability in the western United States. Proceedings of the 16th International GiESCO Symposium, Davis, California. July 12-16, 2009
  • Jones, G.V., Duff A.A., Hall A. and Myers J.W. (2010). Spatial analysis of climate in winegrape growing regions in the western United States. American Journal of Enology and Viticulture. 61 (3): 313–326.
  • Monchiero, M. (2017). Il terroir e il vino. Nagano Wine栽培情報ネットワーク構築事業 栽培技術向上カンファレンス2017提供資料: 2017年8月29日
  • Risso, L. (2008). Indici Pedoclimatici Parte 1a: LA TEORIA. https://www.tigulliovino.it/scrittodavoi/indici-pedoclimatici.pdf
  • Tonietto, J., and Carbonneau, A. (2004). A multicriteria climatic classification system for grape-growing regions worldwide. Agricultural and Forest Meteorology, 124(1-2): 81-97.
  • van Leeuwen, C. (2016). Managing vine water uptake,nitrogen status and training system to optimize wine quality. 農林水産省農林水産技術会議 醸造用ぶどう栽培技術研究会提供資料: 2016年3月15日
  • Winkler et al. 著、望月ら・共訳. ブドウ栽培総論(改訂版).山梨県ワイン酒造組合発行
  • 亀岡孝治、渡辺直樹ら. (2017). 圃場における生育環境情報取得のための無線センサネットワーク構築. 農業情報学会 農業情報研究26(1),2017.11-25
  • 日本ソムリエ協会. 日本ソムリエ協会教本2019.